2007年6月15日 (金)

梅雨空の下の陽だまりに

むかーしむかし、雨の路地裏に、
自分の運命を悲観して斜に構えた態度をとる
小さな木がありました。

彼の名はパルプサン

彼の花が咲く時期は梅雨時。

でも、その時期が訪れても
花を咲かせることはありませんでした。

なぜでしょう?

他の花は春ののどかな陽の下で綺麗に咲くのに、
自分だけ毎日雨に打たれながら咲かなければいけないのが
納得いかないようです。

見かねてパルプサンの隣りに立っているお地蔵さんが
言いました。

『君は嫌かもしれんが、
君が花を咲かせると道ゆく人は喜ぶだろうなぁ』

パルプサンは聞こえないふりをして、
こころの中で答えました。

「なんで他人のために咲かなければいけないんだ、フン。」


緑色の大きな葉っぱの上にかたつむりが現われると、
やがて音も立てずに雨が降り出しました。

かたつむりのマイはつぶやきました。

『梅雨時にしか
姿を現わさない太陽があるって知ってる? パルプサン』

パルプサンは気になって考えました。

梅雨空なのに太陽が出ているわけがない。

どういうことなんだろう?

お地蔵さまがささやきました。
『自分の顔をみてごらんなさい』

パルプサンは水たまりに自分の姿を映しました。

でも、つぼみのままではよくわかりません。

パルプサンは白い花を少し咲かせてみました。

しばらく考えて、今度は花びらに色をつけて
全部咲かせてみました。

それでも、水面に映った自分の姿に
答えはないように思えました。

溜め息まじりで顔を上げたパルプサンは驚きました。

道ゆく人々が自分のことを見て
嬉しそうな顔をしているのです。

パルプサンは気づきました。

「梅雨がなくなることはないし、
  他の花になれるわけでもないか。
      自分にできることをしよう」

雨の裏路地に、小さな花が集まってできた
紫色や水色のかたまりが、あちこちに見られるように
なりました。

彼はそう、紫陽花(あじさい)の木だったのです。

彼の咲かせる花は、不思議と雨もまたいいものかもね、
と思わせる温かい雰囲気がありました。

まるで木漏れ日がモザイク状に照らしているようです。

梅雨時にしか現われない太陽とは、
誰もがこころの中に持っているものなのかもしれませんね。

それから毎年、
道ゆく人たちが足を止め集まるようになったそうですよ、
梅雨空の下の陽だまりに。

byアンデルヘン
(注;某有名童話作家とは一切関係ありません)

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2006年8月23日 (水)

砂浜物語④~大脱出~ byアンデルヘン

浜の向こうに大きな海亀の姿が見えます。

産卵でしょうか?

どうやら違うようです。
残念ながら死んでしまった海亀のようです。

海亀の寿命は人間と同じ位らしいですが、
寿命を待たずに
息途絶えてしまうことも珍しくありません。

まず、孵化して海まで歩く間に鳥などに食べられたり、
海の中ではサメに食べられたりして、
大きくなるのはごく僅か。

さらに
海に浮いたビニールなどのゴミを食べてしまい
消化できずに
死んでしまうこともあるようです。

Rimg0087 季節は夏の終わりになりました。
海亀の産卵シーズンは過ぎ、
子ガメの孵化が始まりました。

産卵後、約2ヵ月で卵が孵ります。

でも、孵化しない卵もあり、
孵化したとしてもそこは砂の中。
砂の上に出れずに
死んでしまうこともあります。

カァートルは
砂の温度が低くなった夜に
砂から脱出を試みました。

なぜ夜に?

昼間だとせっかく地上に出ても
天敵が多いからです。

カァートルは小さな前足で
必死に砂を掻き分けました。

急に抵抗がなくなり、光を感じました。
明るいほうへ全力で歩きます。
すぐ近くでカラスが仲間を連れ去りました。

あともう少しで海だよ、カァートル。
がんばれ、がんばれ!

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砂浜物語③~大航海~ byアンデルヘン

むかーしむかし、
子ガメのカァートルは海に出て、危機を乗り越えました。

一安心したカァートルはお腹が空いてきましたが、
ここは大海原の上。
手軽に食べられる貝などはありません。
仕方ないので
漂流している魚の死骸とか
クラゲを食べて過ごしました。

そうしてどの位の日が過ぎたでしょう。

手のひらに乗る大きさしかなく
軟らかかった甲羅も大きく堅くなった頃、
日本の南の島を出発したカァートルがいる場所は
どこだと思います?

日本?Rimg0103_1 いいえ。

なんと、
海流に乗って
アメリカのまでやってきたのです。
でも、まだ航海は路半ばなんですよ。

太平洋の海流は日本の沖縄あたりから
四国沖、千葉、東北、北海道、ロシア、
アラスカ、カナダ、アメリカ、メキシコへと
一筆書きのようにつながっています。

この先は?

ハワイや赤道近くです。
そして、東南アジアを経由し、
また日本へと戻ってきます。

と、いうことは?

そうです。この海流に乗って海亀は成長し、
生まれて何年か何十年か後に
日本の南の島に再び帰ってくるのです!!

うさぎもびっくりの大航海ですよね。

再び帰ってきたアカウミガメたちは、
春から夏にかけて砂浜に卵100個位の産卵を、
20日おき位に数回繰り返すのです。

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砂浜物語②~船出~ byアンデルヘン

むかーしむかし、
子ガメが一匹、砂浜を越えて海まで辿り着きました。

アカウミガメの子・カァートルは、
歩かなくてよくなったので一瞬ホッとしましたが、
水の中では息ができないことに気付き
すぐに慌てました。

もがいているうちに頭が水面より上になったので、
こうすれば息が吸えるんだと
わかりました。

泳ごうと試みましたが、思ったように進みません。

そのかわり、
カラダが勝手に移動しているのを感じます。
そう、海流で流されているのです。

カァートルはどうしようもなく、
ただ流れに身を任せるしかありません。

この先どうなるのやら・・

Rimg0160_1 夜が明けて朝になりました。

カァートルのまわりに
小魚の大群がやってきました。
と同時に何かの鳴き声がし始めました。

バシャ!ジュボッ!

カァートルの近くで
何かが水中に飛び込んでは
飛び出していきます。

そう小魚を狙う鳥の大群です。

「自分も食べられてしまう!」

カァートルは必死にもぐりました。
小魚の群れがすごい勢いで散ったかと思ったら、
次の瞬間、
今度はサメが歯をむきだしてやってきました!

カァートルは驚いて水面まで逆戻り。

絶体絶命!?

しかし、幸いに鳥山はすでに移動して、
サメも小魚を追ってどこかへ消えていました。

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砂浜物語①~無数の足跡~ byアンデルヘン

夫が旅の思い出に童話を書いたので公開したいと思います。
屋久島は、彼にとってもお気に入りの場所になったようです。

ちなみに、「アンデルヘン」がペンネーム。
有名な童話作家とは一切関係ありませんので、ご注意を・・・(^_^;)

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むかーしむかし、
ある島に美しい砂浜がありました。

浜を歩くと、
やがて交互に丸い足跡らしきものがありました。

たどってゆくと
波打ち際から離れた砂浜に、
こどもが寝転んだぐらいの大きさで
深さ15センチ程度の窪みがたくさんあります。

Rimg0088_1 何でしょう?

誰かが落し穴にハマったのでしょうか?

いいえ、
足跡の正体は海亀で、
窪みは海亀が産卵した跡なのです。

砂浜は500メートルくらい続いていますが、
窪みも足の踏み場もないほどあちこちにあり、
ずっと続いています。

窪みをよく見ると
小さな小さな足跡がたくさん
放射線状に延びています。

これは?

そう、子ガメが出てきた足跡です。

足跡たちは窪みの山を乗り越えると、
一目散に海へ向かっています。

海亀たちはどんな一生を送るのでしょうね?
少しばかり覗いてみましょうか。

ちょうど日が暮れて暗闇になりました。
月の光を海面が反射して明るく見えます。
子ガメは明るい方に進んでくるようですよ。

ほら、また1匹子ガメがやってきました。

必死に歩いているので、
ウサギが歩くくらいのスピードがあります。
波打ち際までやってきて、
打ち寄せる波が消えたとき、子ガメの姿もなくなりました。

さあ、大航海の始まりです!

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